MIZUNOS'SCAPE
home market scope till now,from now books about IMA profile

market scope

2011年12月
 
猿楽町通信
水野 誠一

ブータン国王ご夫妻の来日に考える

ブータン国王ご夫妻が来日された。
歓迎レセプションに参加したが、当日、国会で見事なスピーチを自らの言葉でなさったこともあり、歓迎する熱気はすごいものがあった。
ブータンというと、GNH=国民総幸福度という話で語られることが多いが、それよりも先王が昭和天皇の大喪の礼の際に来日され、天皇陛下の崩御に対する慎み深い礼節ぶりと親日感に、日本国民が感動したことも記憶に新しい。

今回も、ブータン国王夫妻の来日でにわかにブータンに注目が集まったが、情けないことに、ブータンと日本では経済規模が違うからGNHの理屈など話にならないと公言する短絡者がいる。
誰も日本にブータンの真似をしろ、などとは言っていない。GDP尺度一辺倒で突っ走って来た日本国民が、あまり自らを幸福と感じていない点に気付き、それならもうひとつ別の尺度を持ってみたらどうか?という提案だ。
「GDPで中国に抜かれた!成長のみが命だ」、と信じている人が未だに多い。GDPを是とするにしても、そもそも豊かさとは全体の経済規模ではなく、一人当たりのGDPが問題なのではないか。
さらに言えば、物質文明を絶対価値と思っていた人々は決して幸福を実感することができない。富には上限がないからだ。盛者必衰の理からの不安もある。そして富めば富んだで、永遠の命が欲しくなるのが世の倣いでもある。
だから、個人個人の価値観によって、真の幸福とは何かを考え直してみたらどうだろうか?というヒントなのだ。それは「文明」だけでなく「文化」、「成長」だけではなく「成熟」という物差しに持ち換えてみる提案でもある。
大体21世紀に入っても、成長こそが総てと思っていると、地球が資源的にも環境的にも持たない状況になってきていることは事実だ。
20世紀のうちに大半の資源を蕩尽してしまったからだ。それだけではない。
大量殺戮兵器の開発。不完全な原子力の平和利用という罠。100年間の愚行は枚挙に暇がない。
途上国の人口爆発もそれに加速を掛ける。
だから、20世紀の考え方を一旦置いて、絶対規模の拡大ではなく、質の成熟化ということを考えなくてはいけない時代になってきたのだ。
それをしない限り70億人の人類の滅亡の速度を早めるだけなのだ。空気も水もない火星で暮らす覚悟でもない限り……。
そういう時代だからこそ、ブータンやコスタリカという国の生き方には、大きなヒントが隠されている。
今回のブータン国王が持ってきてくれた最大のプレゼントは、その気づきなのだ。
とは言うものの、それに絶対に気づかないのが経団連だ。
せめて経済同友会には気づきを期待したいのだが……。
そして民主党にも期待していたのだが、気づく気配もない……。

兎も角、未だ成長神話を信じて、「ハーメルンの笛吹き男」の笛の音に乗せられて崖に向かって行進をしていく愚か者にはなりたくない。
立ち止まってみることなら、今からでも決して遅くはない。
世界人口の0,01%でしかないたかが人口70万人の小国の戯れ言と切って捨てないことだ。我々に多くの気づきを与えてくれているのだから。


浜岡原発は運転停止中だが……

近々、再び日本を巨大地震が襲うのではないかという予想が出回ってきた。

▼【地震予知】最大震度7以上の地震がまもなくやってくる!東日本大地震の発生を“的中”させた研究者が警告
福島原発事故について、東電は今まで津波という未曾有な天災のよるものだから、事故が起きてもしかたなかったと言い続けてきた。 しかし、研究者の調査では、二号機は津波の前に地震の揺れで壊れていたのではないかと疑われるなど、天災ではなく人災だったという見方が勝ってきている。
▼福島原発2号機は揺れで損傷か 専門家が解析
直下型ではない地震の想定範囲内の揺れにも関わらず、冷却電源になる送電線が津波前に倒壊していたこともその証拠だ。 特に冷却装置の配管接続が揺れには全く絶えられないことは、僕が浜岡原発停止運動の中でも再三主張してきた通りである。
そこで出て来た擁護派の見解を聞いてたまげた。今までは「千年に一度の天災なんだからしょうがない」だったのが、 「今回は人災だったのだから、備えさえちゃんとすれば、原発の災害事故はいくらでも防げるではないか」と、ちゃっかり論理をすり替えているのだ。
今回の事故が総て人災だとは誰も言っていない。確かに想像を絶する大型の天災であったことは事実で、その備えが不十分だったという人災の要素がさらに大きかったという複合災害だと言っているのだ。

先日、国土交通省管轄の公安空港技術研究所の堤防研究者の話を聞く機会があった。 彼が講演後の雑談で、つい本音を語ったところによると、「いかなる防波堤や防潮堤を造ろうが、絶対安全ということはあり得ない」ということだった。 正直な話だろう。人間の浅知恵で何かを造れば、自然は必ずそれを試してきて乗り越えて見せる。それが自然の脅威というものだ。

まして、浜岡原発で工事が始まった「18m高の防波壁」など、我々素人が見てもなんの役にも立たないことは明らかなのである。 浜岡の廃炉を訴えに静岡県の川勝知事に単身直談判に行ったとき、知事は中電が出してきたこの防波壁の計画図を見せてくれて、「全く役に立つとは思えない。まさに壁でしかないし、両側にある河川から津波が入り込んだら意味がない……」と本音で感想を語っていた。そんな代物を1000億円も掛けて造ろうとしているのだ。
浜岡原発の場合、東海地震は駿河トラフ連動の直下型で起こる可能性が高い。 浜岡原発を取り囲む8本の活断層が動いた場合、津波以前に炉自体が崩壊するというのに。知事は、運転再開はまずムリだという見解だったが、ならば一刻も早くそんな無駄金を使わずに廃炉の決断をさせるべきだ。 何時再び来るかもしれない巨大地震。浜岡も福島第一も停止中とはいえ、膨大な数の核燃料がプールの中で冷却中という最も危険な状態であることを、努々忘れてはならない。


TPP問題の核心

Facebookでの友人・S氏からメッセージをいただいた。
TPPについて懐疑的な私に対して、寺島実郎氏のTPPに対する見方を参考までに教えてくれたものだ。
寺島氏とは昔から面識があり、我々が仲間で開いている勉強会にも何度かお呼びしている。ただし最近は、鳩山首相の特使?でワシントンを訪ねたり、原発推進派であったりで、ちょっと微妙な評価だった。
だが、さすが三井物産出身だけあり、このTPPへの見解は肯けるものだ。 (以下S氏のメモを引用させていただく……)

2010年の横浜のAPECで菅首相は半知半解のまま「平成の開国」といいTPP(環太平洋パートナーシップ)への参加に言及。あの時点で交渉に参加していればまだ間に合った。
しかしこの一年にやるべきことをやらないまま、仕方ないから参加しようかというムード。
自分は20年前から日本から日米自由貿易協定の締結を提唱してきたが、今回の参加には疑問がある。
産業と農業の戦いにしてはいけない。韓国は大統領が産業界に対し「技術と資金」で農業を支援せよと命令的に伝えている。バイオ技術などで農業を支援。
9カ国のうちすでに6カ国とはFTAを締結済み。だからTPPの実態は日米自由貿易協定だ。
今さら?というタイミング。迷惑な参加者となり、非主体的立場にならざるを得ない。今回は「参加せよ」とは言い切れないところがある。
私の考え。
1. 基本は開国すべきだ。
2. 今回のTPPは準備不足。
3. 今更の参加は主体をとれない。
したがって今回は見送るのが正しい。その上で、アメリカに対して二国間EPA(包括的経済協定)を蒸し返し提案する。日米同盟とはいうが軍事同盟に偏っており、経済面では同盟関係にはない。
FTA(自由貿易協定)はユダヤ人の発明。1985年のアメリカとイスラエルが最初。1990年アメリカとカナダ。1991年北米自由貿易協定。 このあたりで寺島は日米自由貿易協定を提言。橋本首相に日米FTAを結ぶこと、WTO本部を日本へと提案。 日米貿易摩擦に対し政府は「バイからマルチへ」といいWTOに期待した。しかしその後二国間協定が主流になってきたため出遅れてしまった。 通産省はFTAという言葉を使いたくないためEPAというようになった。アメリカはFTAを韓国で打ち止めという方針になった。したがってTPPに入るか入らないかという問題になってしまった。
後手々々。せんちん詰め。引くに引けない状況、愚かなゲーム。今から参加しても主張の場もないだろうし歓迎はされないだろう。日本の外交力、政治力の弱さ。
欧州の経済危機。いったい何に直面しているのか。アメリカ流の金融資本主義の行き詰まりだ。
・金融は産業金融、育てる資本主義が原点だった。1985年あたりから金融のビジネスモデルが「マネーゲーム」へと変わってきた。「額に汗して働く」から「濡れ手で粟」のビジネスモデルへ変わってきた。 ゴールドマンサックスのような投資会社・アドバイザーがギリシャの国債を売り赤字を増やし危機に陥れた。郵政民営化で簡保の宿などを扱い物凄い手数料を取り詐欺まがいでさっさと消えて行った。 オリンパスの件も600億円の手数料の一部が赤字補てんに使われ粉飾決算に。資本主義の死に至る病。

まさに、その通りだろう。
早速私は返信で……、
「寺島さんのこの見解はほぼ賛成です。いきなりゲーム進行中の賭場に飛び込んでディーラーの言いなりに賭けるようなものですから。こういうのを鴨ネギと言いませんでしたっけ?」と返した。
先日もFacebookで、南川一郎氏が紹介していた拓大教授・森本敏氏の「もはや日本にはNOという選択肢はない」という見解に対して、以下の様な趣旨の返信を書いたばかりだった。

「NOが言えない状態に自らを追い込んだことが外交の稚拙さでもあり、未だ出口の見えない普天間問題が尾を引いていることもありますね。
だが、もっと交渉の先手を取れたならば、個別のFTA(EPA)という選択肢もあったはずです。TPP(過去のFTAやNAFTAでもそうですが)の最大の危険性はご存じの様に、ISD条項とラチェット規定でしょう。 取り除くべき例外事項はコメの関税などではなくてこれらです。これでカナダやメキシコと米国企業の間で膨大な数の訴訟が起こり、悉く相手国が負けています。その額たるや天文学的な数字です。 これと比べれば、関税撤廃などは、影響の大きさも含めて、実は大した問題ではない。取りあえず、一呼吸おくべきです。
今回のASEAN+3で中国が、日本のTPPへの参加に対して米国に懸念を表明してきたことなども、強かな政治家や外務省官僚なら、逆手に取って利用すべきですけどね。 ちなみに中国がこのTPPに入れ(ら)ない理由 — 米国が対中包囲網として考えているのが本音ではありますが — はひたすらISD条項の存在だと言われています。例えばGoogle問題など、中国には巨額の賠償が生じてしまうからです。
しかし、強かな中国は自らのリーダーシップでドイツ中心にEUとFTAを結ぼうとしているようですね — 日本はここでも出遅れています — 外交未開国のピンチです」
と……。

だが、ここで付け加えておきたい私の最大の懸念がある。 それは、工業や農業の輸出入の量的な問題ではなくて、ひたすら農業、すなわち食糧の安全性の問題だ。

ここに、アメリカのモンサント社の遺伝子組み換え作物による世界戦略の実態をレポートしたものがある。フランスのArte社が2008年に制作した番組だ。


▼TPPの先にあるものを暗示している動画・遺伝子組み換えとモンサント

これを観ていただくと分かることは、モンサント社という巨大企業が、総ての雑草を駆除する「ラウンドアップ」という強力除草剤を作り、唯一それに耐性を持つ大豆を遺伝子組み換えで作り出したという事実である。
アメリカ産の大豆の91%が、遺伝子組み換え大豆だという。これが世界を制覇しつつあるわけだが、TPPが発効したときは、日本でも同様のことが起こる。人体に及ぼす影響がまだ計り知れない遺伝子組み換え大豆が跋扈することになるのだ。
しかも、このTPPを経団連が積極的に推し進める背景に、米倉会長が所属する住友化学とモンサント社の深い関係と無関係とは思えない。
▼経団連・米倉社長がTPPに前のめりなのは、モンサントと住友化学が長期的協力関係を結んでいるからか
「ラウンドアップ」の発ガン性も含めて、これほど危険な世界的農業戦略は他にはありえない。
この恐ろしい戦略が抗しがたいものであることは、先に述べたISD条項の存在もある。
レーガン時代の規制緩和の落とし子、しかも当時副大統領のパパ・ブッシュが一枚噛んでいた。その後パパ・ブッシュが大統領になりそれを推進させた。それだけではない。 FDAとの癒着の具合は、遺伝子組み換え・牛成長ホルモン「ポジラック」でも大々的なデータの改竄をするなど、デタラメな事実に満ちている。
この牛成長ホルモンの流入にも歯止めが効かなくなるだろう。
またこのモンサント社が作った枯れ葉剤が、ベトナムでいかなる悲劇を生んだのかも忘れてはいけない。
インドで多くの自殺者を生みだした、BT遺伝子組み換え綿導入の悲劇も看過できない。種苗会社が買収されて、農民に種子の選択肢が無くなったための悲劇だ。
また、メキシコの豊富な在来種トウモロコシへの遺伝子の汚染にも注目しなければいけない。NAFTA によって強制的に流入した遺伝子組み換え種によって在来種が瀕死の状態になっているという事実だ。 日本のコメでも同じ事態が起きる可能性を怖れる。

私は、くれぐれもこの遺伝子組み換え大豆や、牛成長ホルモンの流入だけは阻止しなければならないと思っている。
そのためにも、ひとりでも多くの方にこのビデオを観ていただいて判断して欲しい。


(c) 2005 MIZUNO'S SCAPE, All rights reserved.